相続債権者からの催告に債務の詳しい記載・資料がない場合の起算点
相続債権者からの催告に債務の詳しい記載・資料がない場合の事例
今回は、相続債権者からの催告・請求に、被相続人が負っていた債務の詳しい内容や、その資料がまったくなかったようなケースについて考えてみたいと思います。
債権者から相続人に対して催告があれば、通常、相続人はその時点で相続債務の存在を認識することは可能であり、熟慮期間も催告を受けた時から起算されると考えられます。
しかし、それまでまったく交渉のなかった債権者から、ある日突然催告を受け、その内容も、単に支払いを請求するだけのものであって、債務の内容についての記載や、それを示す資料の添付もなかったような場合には、相続人がその債務がはたして本当に存在するのか否かということを判断することは不可能であり、この催告を受けた時点から熟慮期間を起算するのは、あまりにも相続人にとっては酷です。
これに似た事例において、裁判所は、相続人が上記のような催告書のみを受け取っただけでは、その債務の存在を疑ったとしても不合理ではないとして、相続放棄の熟慮期間が起算されることはないと判断しました。